科学技術と人間の共存について坂村健教授登場のBSフジの番組

標題の件、坂村教授はいつも通りの落ち着いた慎重な話し方でありつつ、情熱的に感じられました。
IT関係の科学者というような立場でありながら、広く社会全般を考えていらっしゃって、大変参考になりました。
内容で自分に残っている部分を大雑把にまとめてみます。

【相手を知る】
・科学技術者はもっと人間を知ることが大切。日本のように新しい技術が
コストダウンのためだけに使われたり、高機能になるばかりというので
なく、もっと人を知って、幸せに貢献しなければならない。
・科学技術の世の中なので、享受する人も、科学技術について知ること、
リテラシーが必要。
・欧米諸国では、何十年も前から、文系、理系の分離が問題だという
ことで、それぞれを学びやすくなっている。文系の人はシェークスピアが
常識で、理系の人は熱力学の第二法則が常識。それぞれの基盤が違うから
お互いに理解できない。このため、経済学をしていた人が情報系に進み、
更に医学系に進むといった人もいた。日本ではそういうのは大変難しい。
日本でも寺田寅彦が文系理系の相互理解が必要だと大正時代に
言っていた。
・個々を大切にすることは必要で、例えば電気に頼らない生活を送りたいと
いう人の生き方は尊重されるべきだ。ただし、そういう人でも社会の
ことを理解するようにすることが必要だ。

【世の中は複雑】
・エネルギーの問題にしても、食の問題にしても、複雑だ。簡単に
しようとして例えにしようとしてしまうと、どんどん違った方向に
行ってしまう。だから、難しいものだが、それから逃げずに理解していく
必要がある。

【変化が速い】
・近年は言われているように、社会の変化が速い。欧米では十年前に
大企業と言われたものが無くなってしまうというようなことも
起きている。
・日本では、大企業が人材を抱え込んでしまい、人材の流動化が進んで
いない。社会が変わっていかなければならないのに、そういう状況なので
停滞してしまう。トップが駄目な大企業に入ってしまうことほど
不幸なことは無い。かつては社会の変化が遅かったから、トップが
駄目でもそれほど問題にならなかった。
・変化が激しい社会なので、ある産業が駄目になったら、別な産業に移れる
ようである必要がある。車が生まれたとき、担ぐ人は仕事が
無くなったが、自動車産業でかえって多くの人が活躍の場を
得られるようになった。日本は新しいことをする人に厳しすぎる。

【情報化】
・日本はハードウェアの技術は今でもトップレベルだが、それを社会に
活かすのが進んでいない。税金が足りないから、警察官も減らすという
ようにならざるを得ないが、そういうときに電話では駄目だ。
ネットワークを使って、この範囲は父兄が監視するというように
ならなければならない。
・Googleマップを使ったマッシュアップで、様々なことが海外では
行われている。そういったことが日本でも必要だ。
・技術的なことをわかりやすく話せる人が不足していて、そういう人が
必要。そういう人がいないために、間違った説明がされて誤解が
広まってしまうという問題がある。
・日本の情報技術は高いし、技術者もプライドを持っている。
この先日本が活躍し続けるには、社会で活用するといったように
皆が支える必要がある。営業面も、戦略面も必要だ。

【絶対はない】
・絶対安全はない。世界の常識であり、経済的にどうかをみて判断される
べきだ。
・例えば、10cmの段差や、1cmの段差でさえ、人によっては危険が
あるかもしれない。科学者が過去にこういうことがあったということを
いうことはできるが、ここからが危険だというようなことを特に
低レベルでは言うことは難しい。

【技術的・論理的な話と感情的な話】
・技術的・論理的な話と感情的な話は、両方が必要だ。
・短期的には感情的な話でよい。電気が来ていなかったり、家がなかったり
したら論理的にするよりも感情的に直ぐ行った方が早くてよい。
このように、短期的には感情的な話の方が強力だ。
・将来のエネルギーをどうするのかといったような長期的な話は、
感情論だけでなく、技術的・論理的な話が必要だ。日本はこの
バランスが悪い。技術的・論理的な話をする環境が整っていない。

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