絆 いま、生きるあなたへ(山折哲雄著)を読んで

 ・今回の東日本大震災を実に落ち着いて過ごした被災者達は、海外の
  大災害の被災者らとは明らかに異なっていた。これを日本人を振り
  返ることで見つめるといった内容だった。

 ・地震学者の寺田寅彦は、科学者でありながら、宗教的な自然に対する
  諦観を違和感なく持っていた。同時代の和辻哲郎も似ていた。

 ・インドは、人生を4つの時期に分ける考えがあった。名前は忘れたが、
  おおよそ、次のような内容であった。
  (1)勉学の時期(2)家長期(3)遊びの期(4)悟りの期
  (2)の家長期は、家族を持ち、世俗的な仕事を行う時期。
  (3)の遊びの期は、家族を持ちつつも、家が安定したこともあり、
  芸術的なことや運動をしたりして、好きなことをする時期。
  (4)悟りの期には、(3)の後で9割の人は家庭に戻るが、1割の人は
  家を離れて(3)の道を究めて聖者となる。

 ・無常には2つある。悲観的なものと、春夏秋冬ときて植物が死に至るが
  また春がくるというようなもの。日本的には前者が多いが、
  インドでは宗教も悲観的でなく、宗教施設でロック等が鳴っている。

 ・親鸞の90年生きた年月も、4つの時期に分けられる。
  (1)の、寺で20年も下積みをした時期。(2)の家庭を持った時期。
  (3)の常陸国などで布教した時期。(4)の家族は新潟に行き、
  弟子達は常陸国に置いてきて、四国で書物の作成などに取り組んだ
  時期。

 ・蜘蛛の糸、菊池寛の小説では、天国は希薄で、地獄の方が
  リアリティを持っている。

 ・志賀直哉の暗夜行路では、妻のことが不倫をしているのではないかと
  疑う主人公が、山で瀕死の状態に陥り、その過ちに気づいた。
  そして、自然に抱かれつつ、このまま死んでもよいという境地に至った。

 ・こういった文人達の小説などと親鸞の思想なども、自然に対する
  諦観といった点では似ている。

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